(5)  平成30年(2018年)12月1日号 No.1241 広報あしや 「自助・共助について考える」  今年は、6月の大阪府北部地震から始まり、過去に例のないくらい多くの災害が起きました。平成30年7月豪雨災害では、芦屋市奥池地区でも観測史上最大の700ミリ以上の総雨量を観測しました。また、台風21号では、高潮による被害がありました。そこで、各家庭や地域での日頃の備えが重要視される中、防災の専門家のお二人に「自助・共助」についてお話していただきました。 自己決定力と地域コミュニティ 松山 災害時の対応は、知識や経験と、市やハザードマップなどから得られる災害情報が基本です。それをもとにしてどうするかの判断を個々にしなければなりません。災害時の避難では『自己決定力』が重要で、まずは自身で判断できることが大事です。そのためには住んでいる地域の危険個所や状況に応じた避難方法を分かっていることが必要だと思います。また、一人で避難所に行くことを躊躇する人も多いようです。隣近所で一緒に避難する、自治会単位の避難計画などの地区防災計画を作ってみることもいいのではないでしょうか。 沖村 全員が自己決定力を持っていない場合でも、強いリーダーシップがある人についていく場合もあると思います。みんなで一緒に逃げるんだという気持ちがあると、自己決定力を後押ししてくれます。ただし、その人についていくには、日頃からのコミュニティが重要になってくると思います。日常の防災訓練など地域活動が災害時の避難支援の仕組みにつながると思います。 松山 そうですね。市からの避難勧告だけではなく、身近な人やよく知っている人が避難を呼びかけることが効果的ですね。 「防災」を日常にするには 沖村 防災の旗を振ってもなかなか来てくれないかもしれないので、お祭りや花火大会で、あいさつや会話ができる雰囲気を作り上げていくことが大切です。特に、要配慮者を支援するためには、若い力は必ず必要になってきます。芦屋市の場合は、津波が到来するまでに111分※ありますので、その中で助け合って避難支援することが必要です。 ※南海トラフ巨大地震が発生した場合の県による  シミュレーションによるもの。 松山 ソーシャルキャピタル※という言葉がありますが、お祭りやイベントはソーシャルキャピタル力を促進し、地域のソーシャルキャピタル力が大きくなると自助・共助力が高まり、地域防災力は向上するということ言われています。 ※ソーシャルキャピタルとは、社会的な繋がりあるいは豊かな人間関係のこと。 地域の資源をいかすために 沖村 市が指定した避難所だけではなく、普段から地域の一時避難場所を見つけておくことが大切です。土石流や、津波の場合の一時避難場所を地域であらかじめ定めておくことが大事です。 マンションと地域の取り組みは災害の原因によっても違いますよね。洪水の場合、マンションは戸建て住宅に比べ高さがあり、安全性は高いです。そんなときマンションが地域を支援する仕組みが必要だと思います。南海トラフ地震の場合は、長周期の揺れが予想され、マンションの被害が大きくなります。そういう時は反対に地域がマンションを支援する関係性がいいですね。 声掛けがもつチカラ 松山 基本的には自助だと思います。自分の命が守れなかったら、周りの人も助けられないので。ある地域の事例ですが、地域の防災訓練に要配慮者のかたが参加され、その頑張っている姿、自助を見た他の参加者から支援の手を差し伸べようとする共助の機運が生まれ、地域の要配慮者支援体制ができた事例もありましたので、自助が大切だと思います。 沖村 避難には2つのステップがあって、1つは『危ないので、逃げたいな』と行動までに移せない気持ちと、もう1つは『危ないから、避難しよう』と行動に移せること。後者の場合は、たとえひとりで逃げられなくても、周囲の声掛けがあれば避難できるのだと思います。自助による避難行動を上積みするのは、声掛けなどの共助だと思います。だから日頃から地域と関わることが大事なのです。その関わりの行動(自助)がまた、共助力(地域防災力)を高めるんですよね。 沖村 孝 氏(おきむら たかし) 神戸大学名誉教授 一般財団法人建設工学研究所  近畿地方整備局道路防災ドクター、人と防災未来センター上級研究員、兵庫県土砂災害警戒避難基準雨量検討委員会委員長等を歴任。現在は、一般財団法人建設工学研究所の代表理事として、自然災害科学・地盤・地形工学の分野から豪雨や地震による土砂災害の防災・減災を研究。 松山 雅洋 氏(まつやま まさひろ) 神戸学院大学 現代社会学部客員教授  神戸学院大学現代社会学部客員教授の他、国土交通省地域防災力アップ支援プロジェクトミーティング防災専門委員、兵庫県地区防災計画等策定支援専門家、兵庫県防災士会理事等として活躍。災害時の応急対応を研究分野とし、現在、ソーシャルキャピタルに着目し、住民による災害時要配慮者避難支援に関する促進要因の解明に取り組んでいる。 豪雨災害、地震での被害を防ぐ ─地区防災計画の作成のすすめ─ 神戸学院大学 現代社会学部客員教授 松山 雅洋氏  今年は、大阪府北部地震(震度6弱)、平成30年北海道胆振東部地震(震度7)と巨大地震が続き、風水害では230人を超える死者行方不明者を出した平成30年7月豪雨災害、兵庫県を直撃し大きな被害を出した台風20号、21号と災害の多い年となりました。災害による被害を防ぐにはどうすればよいのか。一つの答えとして地区防災計画があります。この計画は、東日本大震災の教訓から創設された制度で、市町村の一定の地区内の居住者等による自発的な防災活動に関する計画で市町村地域防災計画に位置付けることができます。その特徴としては、①地域コミュニティ主体のボトムアップ型の計画、②地区の特性に応じた計画、③継続的に地域防災力を向上させる計画であることが挙げられます。このように、地区防災計画の内容は、地域の特性に応じて自由に決めることができ、例えば津波の浸水想定区域であれば、隣近所で助け合って避難する自助、共助を生かした避難計画を地区防災計画として市役所や専門家のアドバイスを取り入れながら作ることができます。この計画を芦屋市地域防災計画に位置付けることで芦屋市との連携もスムーズに行えます。いざというときに備えて、あなたの地域でも地区防災計画を作ってみませんか。 台風21号への 今後の対応について ■国・県・市による大阪湾港湾等における高潮対策検討委員会(尼崎西宮芦屋港部会)において再現シミュレーションを実施し、浸水原因を究明した上で、今後の護岸のかさ上げ等に向けて、高潮対策の見直しを行います。 ■今後の避難情報の発信、水防活動のあり方の検証や、避難所や備蓄を充実させるとともに、最大想定の高潮に対するソフト対策を実施します。 ■必ず救い出す!12月10日~16日北朝鮮人権侵害問題啓発週間 この機会に拉致問題についての関心と認識を深めましょう。 [問い合わせ]人権推進課 ☎38-2055